有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者等の非正規労働者の企業内でのキャリアアップを促進するために、正社員に転換したり、人材育成や処遇改善などの取り組みを実施した事業主に対して助成する制度です。
キャリアアップ助成金を利用することで、従業員のモチベーションを向上させたり、優れた人材を安定的に確保でき、企業の効率性、生産性も高まる為、ぜひこの助成金制度を活用されてはいかがでしょうか。 |
コース名 | 中小企業の金額 |
---|---|
正社員化コース |
※正社員として6か月雇用後に1期目を申請し、
新設(加算措置)
※「無期から正規」の転換制度を新たに規定した場合も同額を加算 |
賃金規定等改定コース | 有期雇用労働者等※の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し、その規定を適用させた場合に助成します。
※1年度1事業所あたりの支給申請上限人数は100人 |
賃金規定等共通化コース | 就業規則または労働協約の定めるところにより、その雇用するすべての有期雇用労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに作成し、適用した場合に助成します。
※1事業所あたり1回のみ |
賞与・退職金制度導入コース | 就業規則または労働協約の定めるところにより、すべての有期雇用労働者等に関して、賞与・退職金制度を新たに設け、支給または積立てを実施した場合に助成します。
※1事業所あたり1回のみ ※過去に「旧諸手当制度共通化コース」および「旧諸手当制度等共通化コース」の助成金の支給を受けている場合は、本コースの支給対象外となります。 (健康診断制度を新たに設け実施した場合の助成のみを受けている場合を除く。) |
短時間労働者労働時間延長コース | 雇用する有期雇用労働者等について、週所定労働時間を延長することにより当該有期雇用労働者等を新たに社会保険の被保険者とした場合に助成します。
(週所定労働時間を3時間以上延長し、新たに社会保険に適用した場合)
(労働者の手取り収入が減少しないように所定労働時間を延長し新たに社会保険に適用した場合)
※どちらも1年度1事業所あたり支給申請上限人数45人まで |
「中小企業事業主」の範囲
※キャリアアップ助成金の受給額は、企業の規模によって異なりますが、
資本金等のない事業主については、常時雇用する労働者の数により判断します。
この助成での「中小企業事業主」の範囲は以下の通りです。
資本金の額・出資の総額 | 常時雇用する労働者の数 | ||
---|---|---|---|
小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | または | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 | |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 | |
その他業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
- 雇用保険適用事業所の事業主
- 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主(※キャリアアップ管理者は、複数の事業所および労働者代表との兼任はできません。)
- 雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主
- キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主
- 実施するコースの対象労働者の労働条件、勤務状況および賃金の支払い状況等を明らかにする書類(賃金台帳や出勤簿)を整備し、賃金の算出方法を明らかにすることができる事業主
ただし、次のいずれかに該当する事業主はこの助成金を受給できません。
- 支給申請した年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主
- 支給申請日の前日から過去1年間に、労働関係法令の違反を行った事業主
- 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれらに営業の一部を受託する営業を行う事業主
- 暴力団と関わりがある事業主
- 暴力主義的破壊活動を行った、または行う恐れがある団体等に属している事業主
- 支給申請日、または支給決定日の時点で倒産している事業主
- 支給決定時に、雇用保険適用事業所の事業主でない事業主 (※雇用保険被保険者数が0人の場合や事業所が廃止されている場合等を指します。)
①有期雇用労働者または無期雇用労働者(次のいずれかに該当する労働者)
- 支給対象事業主に、賃金の額または計算方法が正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等の適用を通算6か月以上受けて雇用される有期雇用労働者 または無期雇用労働(※有期雇用労働者から転換する場合、雇用された期間が通算して3年以内の者に限る。有期雇用労働者等に適用される雇用区分の就業規則等において契約期間に係る規定がない場合は、転換前の雇用形態を無期雇用労働者とする。)
- 6か月以上の期間継続して派遣先の事業所その他派遣就業場所ごとの同一の組織単位における業務に従事している有期派遣労働者または無期派遣労働者(※昼間学生であった期間を除く。有期派遣労働者から直接雇用する場合、雇用された期間(派遣元事業主に有期雇用労働者として雇用された期間)が3年以内の者に限る。
- 支給対象事業主が実施した有期実習型訓練(人材開発支援助成金(人材育成支援コース)によるものに限る)を受講し、修了した有期雇用労働者等であって、支給対象事業主に賃金の額又は計算方法が正規雇用労働者等と異なる雇用区分の就業規則等の適用を通算6か月以上(転換日までの雇用期間が通算6か月に満たない場合は、雇い入れから転換日までの適用を)受けて雇用される者(※有期雇用労働者から転換する場合にあっては、雇用された期間が3年以内の者に限る。賃金額又は計算方法が正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等の適用については、令和5年10月1日以降に転換する者より適用する。)
- 新型コロナウイルス感染症の影響を受け、就労経験のない職業に就くことを希望する者であって、紹介予定派遣により2か月以上6か月未満の期間継続して派遣先の事業所その他派遣就業場所ごとの同一の組織単位における業務に従事している有期派遣労働者または無期派遣労働者(※昼間学生であった期間を除く。有期派遣労働者から直接雇用する場合、雇用されて期間(派遣元事業主に有期労働者として雇用された期間)が3年以内の者に限る。また、同一の派遣労働者が2か月以上6か月未満の期間同一の組織単位における業務に従事している場合に限る。)
②正規雇用労働者として雇用することを約して雇い入れられた有期雇用労働者等でないこと。(※正社員求人に応募し正規雇用労働者とし雇用することを約して雇い入れられた者ではないこと。)
③正社員化の前日から過去3年以内に、当該事業主の事業所または資本的・経済的・組織的関連性からみて密接な関係の事業主において正規雇用労働者として雇用されたことがある者、請負もしくは委任の関係にあった者または取締役、社員、監査役、協同組合等の社団もしくは財団の役員であった者でないこと。(※社員とは合名会社、合資会社または合資会社または合同会社の社印を指し、いわゆる従業員という意味ではない。)
④正社員化を行った適用事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族以外の者であること。
⑤支給申請日において、正社員化後の雇用区分の状態が継続し、離職していない者であること。(※本人の都合による離職および天災その他やむを得ない理由の為に事業の継続が困難となったことまたは本人の責めに帰すべき理由による解雇を除く。)
⑥支給申請日において、有期雇用労働者または無期雇用労働者への転換が予定されていない者である
⑦正社員化後の雇用形態に定年制が適用される場合、正社員化日から定年までの期間が1年以上である者であること。
⑧支給対象事業主または密接な関係の事業主の事業所において定年を迎えた者でないこと。
⑨障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律施行規則に規定する就労継続支援A型の事業所における利用者以外の者であること。
正規雇用労働者定義
同一の事業所内の正規雇用労働者に適用される就業規則が適用されている労働者。
ただし、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限る。
※正規雇用労働者としての試用期間中の者は、試用期間終了日までは本助成金の対象とする措置上、正社員化が完了したものとはみなさず、賃金上昇要件等や支給申請期間において、転換日又は直接雇用日を試用期間終了日の翌日と置き換える(なお、当該取り扱いは、正社員化コースに限るものとするが、うち対象労働者要件においては事業所における正社員化した日を基準として正規雇用労働者と異なる就業規則等の適用を確認する。)
・「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」のある正規雇用労働者への転換が必要となります。
【賞与】
〇「賞与は原則として支給する。ただし、業績によっては支給しないことがある。」
〇「賞与は原則として、下記の算定対象期間に在籍した労働者に対し、会社の業績等を勘案して下記の支給日に支給する。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支給時期の延期、又は支給しないことがある。
算定対象期間 | 支給日 |
月 日から 月 日まで | 月 日 |
月 日から 月 日まで | 月 日 |
月 日から 月 日まで | 月 日 |
✖「賞与は支給しない。ただし業績によっては支給することがある。」
✖「賞与の支給は会社業績による。」
(※原則不支給の規定や、原則として賞与を支給することが明瞭でない場合は、支給対象外となります)
【昇給】
賃金改定の規定(年1回賃金を見直す等)や降給の可能性のある規定であっても、就業規則等に客観的な昇給基準等の規定がある場合には、当該規定の運用により、賃金据え置きや降給の可能性があったとしても、支給対象となり得ます。
〇 客観的な昇給基準等に基づき、賃金据え置きの規定をおいている場合る。
(例:「毎年1回、各等級の役割遂行度を評価し、基本給の増額又は減額改定を行う。」)
✖ 客観的な昇給基準等でなく、賃金据え置きや降給の規定がある場合。
(例:「会社が必要と判断した場合には、会社は、賃金の昇降給その他の改定を行う。」)
・正規雇用労働者として試用期間中の者について、当該試用期間中の正社員待遇の適用の有無に関わらず、正規雇用労働者に転換等したものとは見做しません。
対象となる労働者要件
賃金の額または計算方法が「正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6か月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者
・「正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等」が適用されている非正規雇用労働者の正社員転換が必要となります。
基本給、賞与、退職金、各種手当等については、いずれか一つ以上で正規雇用労働者と異なる制度を明示的に定めていれば(基本給の多寡や賞与の有無等)支給対象となり得ます。
就業規則等における「適用範囲」等の条文において、「契約社員及びパート労働者の就業に関する事項については別に定める」と、非正規雇用労働者を別規定にしている場合や、正規雇用労働者・非正規雇用労働者で就業規則が一体となっていたとしても「雇用形態」等の条文において、「正規雇用労働者」「契約社員」「パート」が区別して規定されている場合は「正規」「非正規」で区別されているものと見做します。
※就業規則において「個別の雇用契約書で定める」と記載している場合は、就業規則等において正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の賃金の額または計算方法の違いが確認できず支給対象外となります。
・適用される雇用区分の就業規則等において契約期間に係る規定がない場合は、転換前の雇用形態を無期雇用労働者として取り扱います。
有期雇用労働者または無期雇用労働者を正社員化する場合、次のすべてに該当する事業主が対象です。
①有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換する制度を就業規則または労働協約その他これに準ずるものに規定している事業主であること。
(規定例)
1. 勤続〇ヵ月以上の者または有期実習型訓練修了者で、本人が希望する場合は、正規雇用に転換させることがある。
2. 転換時期は、原則毎月1日とする。ただし、所属長が許可した場合はこの限りではない。
3. 人事評価結果としてC以上の評価を得ている者または所属長の推薦がある者に対し、面接および筆記試験を実施し、合格した場合について転換することとする。
②上記①の制度の規定に基づき、雇用する有期雇用労働者等を正社員化した事業主であること。
③上記②により正社員化された労働者を、正社員化後6か月以上の期間継続して雇用し、当該労働者に対して正社員化後6か月分の賃金を支給した事業主であること。(※勤務した日数が11日未満の月は除く。)(※賃金とは時間外手当等を含む。)
④多様な正社員への転換の場合にあっては、上記①の制度に基づき正社員化した日において、対象労働者以外に正規雇用労働者(多様な正社員を除く)を雇用していた事業主であること。
⑤支給申請日において当該制度を継続して運用している事業主であること。
⑥正社員化後6か月間の賃金を、正社員化前6か月間の賃金より3%以上増額させている事業主であること。
〈賃金とは〉
・基本給および定額で支給されている諸手当を含む総額
・原則、所定労働時間1時間当たりの賃金で比較する。ただし、正社員化前後において所定労働時間に変更がなく支給形態がいづれも月給であって変形労働時間制でない場合または変形労働時間制であって所定労働時間および支給形態に変更がない場合は、6か月間の賃金の総額。
(注意)
・名称の如何を問わず、実費弁償的なものや毎月の状況により変動することが見込まれるもの等は除く。
・転換後の賃金に定額で支給される諸手当を含める場合、当該手当の決定および計算の方法(支給要件を含む)が就業規則または労働協約に記載されているものに限る(転換前において定額で支給される諸手当は、就業規則等への記載の有無に関わらず正社員化前6か月間の賃金に含める)このため、本要件を満たすためには、労働者に支給する諸手当について、適切に就業規則または労働協約に記載しておく必要がある。
⑦当該正社員化の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に、当該正社員化を行った適用事業所において、雇用保険被保険者を解雇等事業主の都合により離職させた事業主以外の者であること。(※天災その他やむを得ない理由の為に事業の継続が困難となったこと、または労働者の責めに帰すべき理由によるものは除く。)
⑧当該正社員化の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に、当該正社員化を行った適用事業所において、特定受給資格者となる離職理由のうち離職区分1Aまたは3Aに区分される離職理由により離職した者として同法第13条に規定する受給資格の決定が行われたものの数を、当該事業所における当該転換を行った日における雇用保険被保険者数で除した割合が6%を超えている事業主以外の者であること。
⑨雇用する労働者を他の雇用形態に転換する制度がある場合にあっては、その対象となる労働者本人の同意に基づく制度として運用している事業主であること。
⑩正社員化日以降の期間、当該労働者を雇用保険被保険者として適用させている事業主であること。
⑪正社員化日以降の期間において、当該労働者が社会保険の適用要件を満たす事業所の事業主に雇用されている場合、社会保険の被保険者として適用させていること。社会保険の適用要件を満たさない事業所の事業主(任意適用事業所の事業主、個人事業主)が正社員化させた場合、社会保険の適用要件を満たす労働条件で雇用している事業主であること。
⑫母子家庭の母等または父子家庭の父に係る加算の適用を受ける場合にあっては、当該正社員化日において母子家庭の母等または父子家庭の父の有期雇用労働者等を転換した事業主であること。
⑬勤務地限定正社員制度、職務限定正社員化制度または短時間正社員制度に係る加算の適用を受ける場合にあっては、キャリアアップ計画書に記載されたキャリアアップ期間中に、勤務地限定正社員制度、職務限定正社員制度または短時間正社員制度を新たに規定し、有期雇用労働者等を当該雇用区分に転換した事業主であること。
賃金3%以上増額の際に含めることのできない手当
賃金が3%以上増加している事の確認にあたっては、正社員化前後の諸手当を含めた賃金総額について比較しますが、以下は名称を問わず賃金総額に含めることができないため注意。
以下の手当以外の諸手当についても、その趣旨等に応じて算定から除かれる場合があります。
賃金に含めることが できない手当 |
手当の例 |
実費補填であるもの | ・就業場所までの交通費を補填する目的の「通勤手当」 |
・家賃等を補填する目的の「住宅手当」 | |
・寒冷地で暖房費を補填する目的の「燃料手当」 | |
・業務に必要な工具等を購入する目的の「工具手当」 | |
・食費を補填する目的の「食事手当」 | |
毎月の状況により変動することが見込まれる等、
実態として労働者の処遇が改善しているか判断できないもの |
・本人の営業成績等に応じて支払われる「歩合手当」 |
・本人の勤務状況等に応じて支払われる「精皆勤手当」[無事故手当」 | |
・所定外労働時間に旺して支払われる「休日手当」 および「時間外労働手当(固定残業代を含む)」 |
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・一定期間のみ適用され将来に減額が見込まれる「調整手当」 | |
賞与 | ・一般的に労働者の勤務成績に応じて定期または臨時に支給される手当(ボーナス) |
固定残業代について
・固定残業代が基本給に含まれている場合は、固定残業代に関する時間数と金額等の計算方法、固定残業代を除外した基本給の額を就業規則または雇用契約書等に明記してください。
・固定残業代の総額または時間相当数を減らしている場合(固定残業代を廃止した場合も含みます)であって、かつ転換前後の賃金に固定残業代を含めた場合に、賃金が3%以上増額していない場合、支給対象外となります。
(例)正社員化前:基本給20万円+固定残業代5万円=合計25万円
⇒ 正社員化後:基本給21万円+固定残業代4万円=合計25万円
※正社員化後の基本給が増加しており、固定残業代の額に変更がない場合は基本給が増額した分、時間相当数が減少しています。
※基本給を増額させ、かつ時間相当数を減らしていない場合(固定残業代を除いて賃金3%増額要件を確認するケース)であれば、固定残業代は増加します。
「キャリアアップ助成金」の活用に当たっては、各コースの実施日の前日までに、
「キャリアアップ計画書」の提出が必要です。