定年退職後に再雇用され、同じ内容の仕事を続けた場合に賃金を引き下げることの是非が争われた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は2日、引き下げを容認する判断を示した。減額を不当として会社に賃金の差額の支払いを命じた一審・東京地裁判決を取り消し、原告の請求を棄却した。
訴えていたのは、運送会社に再雇用された嘱託社員のトラック運転手3人。原告側は判決を不服として上告する方針。
判決理由で杉原則彦裁判長は「企業は賃金コストが無制限に増大することを避け、若年層を含めた安定的な雇用を実現する必要がある」と指摘。定年前と同じ仕事内容で賃金が一定程度減額されることについて「一般的で、社会的にも容認されている」との判断を示し、不合理ではないと結論づけた。
5月の一審判決は「仕事や責任が同じなのに、会社がコスト圧縮のために定年後の賃金を下げるのは不当だ」と判断。正社員と非正社員の不合理な待遇の違いを禁じた労働契約法に違反しているとし、正社員との賃金の差額計約400万円を支払うよう会社に命じた。
一審判決などによると、3人は2014年に60歳の定年を迎えた後、1年契約の嘱託社員として再雇用された。セメントを運ぶ仕事が定年前と変わらない一方、年収は2~3割下がった。
原告側代理人によると、運送業などでは定年退職者を再雇用した場合に同じ仕事のまま賃金を下げる例が多いという。
(2016年11月3日 日経新聞より引用)
地裁判決では、定年退職後の継続雇用の際、職務の内容等が全く変わらないまま賃金だけを引き下げるという労働条件が社会通念上相当なものとして広く受け入れられているとは認められない。
高裁判決では、定年後に賃金が引き下げられることは広く行われており、不合理とは言えない。
と、まったくの逆転判決です。
定年後再雇用の際に賃金を引き下げることが、同一労働同一賃金原則の例外として認められるかどうか、今後の最高裁の判断が待たれるところです。
会社の就業規則はどうなっているのか、定年後の賃金を引き下げるのであれば、職務責任の軽減、労働時間の短縮の措置を講じていればこのような争いはなかったのではないでしょうか。
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2016年11月7日